15周年役員鼎談 〈後編〉

Interviewer / Date
- 北見 かほり / 2025.05
前編に続き —
「なぜそうするのか」と考えるスタンスは変わっていない
— 15年間の中で、会社を取り巻く環境や技術は変わっていっているというお話でしたが、逆に、15年間変わらないものはありますか?

長尾
難しいな、本当に変わらないものが何かって考えると…蒲澤さんとか美馬さんとかの、ノリ?
一同
(笑)
長尾
あなたたちノリみたいなのあるでしょ。変なこと言い出す感じ。それは本当に変わってないです。これくらいかな(笑)
蒲澤
今日も15年前の話されたら、「あの頃からいつかAIの時代が来ると思ってました(ドヤ)」って答えようとか言ってたもんね。「やっと時代が追いついてきたんです」って。
— クライアントとの付き合い方とかはどうですか?
長尾
ああ、すみません。
蒲澤
インタビュアーいてよかったな(笑)
長尾
やっぱり「本当に大事なものを捉えて、それに対しての解を出していく」っていうことは変えちゃいけないだろうと思いますね。課題ありきで仕事をしていくっていうのがハイジの特徴かなと思います。
美馬
「なぜそうするのか」と考えるスタンスは変わっていないですね。インターフェイスを作る会社の人が右から来るものを左へ流すだけだったら、「その間に立つ人の価値って何?」という話になってしまうので。右から来るものを受け止めて自分の頭で考えて、返すものは返し、左に渡すときも自分の言葉として伝える。そうすることでユーザーとクライアントの橋渡しにもなるし、パートナーのクリエイターたちにも自分の意思で動いてもらうことができる。そこは変わってないところかもしれないですね。
蒲澤
起業した時に書いた企業理念みたいな文章がまさにそういう話でしたね。「人と人とのインターフェイス」に我々がなっていく、みたいなことを最初に言っていて。それは自分の中ではずっと根付いていますね。だから最終的に届く人のことを考えてもの作りをしているし、そういう利他的な姿勢が根源にあるっていう部分は3人とも同じこと言ってるなと思いました。
「考えること」みたいな話で言うと組織作りでも同じように思っていて。理由がないルールとかが嫌いで、そういうのをなるべく排除してルールをあまり作らずやってきたんだけど、そこも実は変わってないなと思います。
仕事は、絶対に人と人との間でしか生まれない
— クライアントの話も出ましたが、この会社にとってクライアントとかユーザーとかってどういう存在ですか?
長尾
ハイジは良くも悪くも課題ありきで輝く人が多くて、課題を解決するために技術を使うのが得意な集団かなと思うので、多分我々はクライアントワークが天職で。お客さんがいて初めて成り立っているなと思います。
だからこそAIの時代になっても新しい関係を築いていきたいし、対等で一緒に何かにチャレンジしていくという関係性はこれからも続けていきたいです。
美馬
徹底的にクライアントとユーザーと同じ視点に立つことをやりきったその先に自分が出てくると思っているし、クライアントとユーザーの双方がいて初めて自分たちの仕事が成り立つわけなので、なくてはならない存在だなと思いますね。
蒲澤
15年やってきて思うのは「仕事って、絶対に人と人との間でしか生まれないな」ということですね。そこを大事にしてこれたからここまでやってこれたのかな、とも思います。クライアントやユーザーもそうだし、(社外の)デザイナーやエンジニアなどの一緒に仕事する人たちもそうです。個人的には、友達みたいな気持ちの方が近いかもしれない…15年って思うとやっぱり浮かぶのはそういう人たちなので。コロナで一瞬みんなと疎遠になってしまったのもあるので、15周年の機会にそういう関係を取り戻していきたいという思いもありますね。
— 社内の人に対してはどうですか?お三方のお互いの関係性や社員に対しての想いを聞かせてください。

美馬
最初の頃は本当に家族よりも長い時間を共に過ごすような距離感だったので仕事上というよりは人生レベルで付き合っていくことに価値を感じられる間柄になれたらという思いはありました。
あと僕は「周りを良くするためにまず自分がいい状態でありなさい」とよく言っています。自分がいい状態であることで、家族や仕事仲間にも良い影響を与えて、それがクライアントやユーザーにも伝播して…と広がっていくと思うので。「社会の仕組みを変えて世界を良くする」というマクロ的な視点もありますが、ミクロな視点で世界を良くしていく方法としてまず自分を良くしていくことは大事だと思っていますね。その意味で、社員が家族の次に大事というのは多分最初から変わってないです。
蒲澤と長尾に対しては、もう本当に言葉通り、気の置けない関係です。それぞれが違う考えを持ちながらも一緒にやっていく間柄なのでもはや気を遣っても仕方ないみたいな関係ですね。
長尾
社員は、1人じゃできない仕事を一緒にやっていく仲間ですね。私の感覚的には家族や友達とは少し違って、信頼し合える仲間、戦友みたいな存在です。役員以外にもほぼ15年一緒にやってきている人もいてそれはすごく特別な存在だし、社員も入れ替わったりしていますが、信頼関係を築いていければお互いの仕事にいい影響を与えられるし、結果それぞれの人生が良くなることにも繋がると思います。役員に関してはどうなんですかね…あんまり考えたこともないですけど、上司的な感覚もあんまりないんですよね。
美馬
15年間で役員のメンバーも変わってきて、自分も一度現場から離れて戻ってきたりしているので。そこの特殊性が良いような気もするけれど、確かに不思議な距離感でやってるよね。
長尾
そうですね、だから言語化できないぐらい複雑性があるっていう感じの方が正しいかもしれません。
蒲澤
僕は、「昔とだいぶ変わっちゃったな」と思ってますね。会社を作った頃は社員のことを友達ぐらいの気持ちで思っていて、他の友達と遊びに行くよりも社員と飲みに行った方が楽しかったし、酒飲みながらずっと仕事の話をするみたいな関係でした。それが時代が変わって「ハラスメント」みたいな言葉で世の中が全部上と下で分かれるようになってしまって、それに対しての自制心なのか恐怖心なのか分からないけど、ちょっと距離感が変わってきたなっていうのは思いますね。後から入ってきてる社員は単純に年齢が離れてることもあるかもしれないけど…それが良いことなのか悪いことなのかは分からないけれど、今はこの距離感が良いと思っている部分はあります。
美馬
基本、真面目だからね。
蒲澤
そう。あとはコロナでみんなが在宅になって、コミュニケーションが変わったのもあるかな。
美馬
コロナは大きかったですね。コロナ禍で在宅になった頃は、蒲澤くんがみんなの家に4Kディスプレイを配って回ったりしていたよね。また同じような状況が起きたら同じようなことをするかもしれないけど、そういう空気もまた何か変わってきたような気がしますね。
「人と向き合う会社」であり続けたい
— では最後に、これから先ハイジ・インターフェースにはどんな道が広がっていそうでしょうか?
蒲澤
(AIなど向き合うべき問題はありつつ)悲観してもしょうがないので、最近は「ちゃんと明るい感じを出していかないといかんな」って思っていますね。危機感を煽っても意味がないですから。
美馬
明るくしていかないといけない、という危機感を持っている?

蒲澤
そう、騙してでも明るい未来をどうやって見せられるかがむしろ大事だからね。
AIは脅威に感じているけれど、AIが台頭した未来にも我々が提供できる価値はあるはずなので、そこを事業としてどうしていくか考えていく必要はあると思っています。
まだイメージでしかないけれど、AIによって「作る」ことが簡単になったときに、世の中的に大事なのってどこだろう?と考えると、まずはフィジカルなものですね。フィジカルなものは強くなると思っていて試していきたいというのと、あとは何かモチベーションを作っていくみたいなところが人間の役割になっていく気がするので、そういう仕事を作っていけたら良いのかなと思っていますね。今までのやり方を脱却したり効率化したりしていくのは必要だと思うんですが、その先にある仕事は売り物自体が全然違うものになってくると思うので、それを今うまくウォッチして考えていきたいです。
長尾
やっぱりハイジって「人と向き合ってる会社」であることは昔から軸が通っていると思うんですよね。我々の仕事は技術を提供する仕事ではあるけれど、本質としては人と向き合っていて、そこの人間的なソフトスキルみたいな部分が私達の仕事の根幹かなと思っています。
UXデザインって、仮説を立てたりリサーチをしたりしながらトライアンドエラーを繰り返して精度を上げていく仕事だと思うんですが、AIによってそのプロセスのコストがすごく下がるし、誰でもできるものになっていくと思うんです。そうなると「じゃあ誰と仕事をしようか」っていう話になって、やっぱりそこで選ばれる会社でありたいなと思いますね。でもそれって私たちが15年間やってきたことと本質的にはそんなに変わっていないはずで、そう考えたら、この先も実直に人と向き合っていけば未来は続いていくのかなと思っています。
美馬
思ってた以上に、2人の話が自分の考えとリンクしてますね。
やっぱり実物のものを作るとか空間やイベントみたいなフィジカルな体験づくりであったり「人をその気にさせる」「人を楽しませる」みたいなことができる人であることが価値になっていくのかなと。
AIによってインターフェイスは作りやすく表現しやすくなったとも思いますし、自分たちはアップデートできる余裕を持ちながら変わっていけると良いんだろうなと思います。15年やってきて変わっていない部分が、次の15年も変わらなかったら結構奇跡だなとも思うし、その奇跡を見てみたい、そのためだったら頑張れるかなと思いますね。
蒲澤
世の中的な話でいうと、みんなの「楽しい」がだんだん変わってきてる気がしていて、その中でも「タイパ」ってすごく良くないなと思ってて。何かを作るのが簡単になって、それを世の中が求めているのも感じるんだけど、そうじゃなくて、大事なのって過程じゃない?って僕は思っていて。作る過程をどう楽しむかが大事で、そこの仕組みを作っていくのもいいなと最近思ってますね。
美馬
消費社会にももう辟易してるし、社会的にも限界来てるよね。
蒲澤
そう。そういう「そっちじゃないよこっちだよ」っていう部分の価値を作っていくのが良いんじゃないかと思っていて……抽象的すぎるので、続きは酒飲みながら誰かに話します。
美馬
本当に昔から何か真剣な話しようってなると「その話、酒飲みながらやろう」って言ってるよね。そこも15年前から変わらないですね(笑)



